1.発端
平成29年10月12日金融庁は仮想通貨取引所11社を認可、審査中19社と発表 (http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf)
このニュースがそもそもの発端。仕事柄ブロックチェーン技術の適応や実装にフォーカスをしてきたが、海外の友人(特に中国)はこの発表を快挙と受け止め、発表の翌週に来日しどうなっているのかと聞きに来ました。一気に、中国マネー、韓国マネーが日本に雪崩込むことが予想される。マネーの専門家ではないのでコメントは避けたいところですが、注目されるのは11社もが管理統制され資産管理システムが運用されているという事実です。実際に9月から10月の上旬にかけて海外からの問い合わせは一気に増えました。これまで仮想通貨に関してあまり関心はなかったがこの異常事態を再考してみた。
2.ICO(Initial Coin Offering)と深い関係
先ずは、ICOについて知らない人のために、ICOとは何かを説明しておきます。
ICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング/新規仮想通貨公開)とは、資金調達をしたい企業や事業プロジェクトが、独自の仮想通貨を発行/販売し、資金を調達する手段/プロセスのことを指します。投資家には「コイン」や「トークン」と呼ばれるデジタル通貨(資産)を購入してもらい、原則として対価は支払われません。別名「クルドセール」や「プリセール」、「トークンセール」などとも呼ばれ、株式を利用した従来の方法(IPO:新規株式公開)以外の資金調達手段として注目を集めています。
大騒ぎの原因は、資金調達一つの道が絶たれることになるからです。
・中国ICO事情
9月4日中国人民銀行通称PBoCが仮想通貨を使用した資金調達であるICOを中国国内で企業または個人により行うことを禁止するという発表を行いました。このICO禁止のニュースは世界中で大きな波紋を呼び、PBoCが再度「ビットコインとイーサリアムは政府によって発行されたものではない」と追記したことからかビットコインをはじめとする仮想通貨が禁止されたという噂が広がり混乱を引き起こしました。さらに中国の大手仮想通貨取引所BTC Chinaは9月末に取引停止を発表した。
・韓国ICO事情
韓国の金融規制当局は、詐欺のリスクがあるとして、あらゆる形の新規仮想通貨公開(Initial Coin Offering:ICO)を禁止すると9月29日に発表した。韓国の金融委員会(FSC)は、あらゆる形のICOを完全に禁止するとともに、デジタル通貨の信用取引も禁止すると述べた。
FSCは、ICOは資産バブルのリスクが高く、投資家が詐欺や市場操作の被害に遭いやすいと述べている。また、ICOが投機目的で利用されたケースが複数あるとして、取り締まりを強化するとした。
FSCは、韓国政府がデジタル通貨の取引を「制度化」しようとしているのではなく、状況を監視して今後の規制監督を改善する意向であることを強調した。
3.日本の金融庁から注意喚起
平成29年10月27日に金融庁から「ICOについて利用者及び事業者に対する注意喚起」を発表。(http://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/06.pdf)
当然のことだが、やっと出たかと言う感じ。
資本政策としてのICOは良い仕組みですが、一方でICOの99%は詐欺(scam)だと言う評価もあります。昨年、ICOをした中国企業が出資法違法ということで出資金を返還しても当局に逮捕されたり、国外に出たりとの話も聞いています。
4.日本政府は大胆に方針転換
10月25日に、今後の金融行政の方針を占める「金融レポート」が金融庁から発表されました。今年の「金融レポート」では、フィンテックに対する金融庁の方針が4つの原則(プリンシプル)として明確に打ち出されました。
(1)「経済の持続的な成長と安定的な資産形成を通じた国民の厚生の増大」という金融行政の究極的な目標に最も良く寄与できるかを基準に判断を行う。
(2)顧客とともに新たな価値を創造し、顧客の信頼を得ることのできる担い手が成長できるよう、必要な環境整備や障害除去をフォワードルッキングに行っていく。
(3)利用者保護上で生ずる新たな課題等に対処する際に、手遅れになって被害を拡大させることがあってはならない。他方、先走って過剰規制になることも避ける必要があり、過不足のない弊害防止策を適時にとることを目指す。
(4)既存金融機関のメカニズムのレガシーアセット化については、当局は金融機関に対しフォワードルッキングな経営を促すことによって対応すべきであり、対応できない金融機関が発生しないようにイノベーションを制限するといった対応は行わない。
5.まとめ
顧客の利益や利便性の向上を目的とした金融サービスのイノベーションが、金融業界の保護よりも優先されることが明確になりました。金融庁のフィンテックに対する方針が打ち出された背景には、フィンテックによって金融サービスのあり方そのものが大きく変わる可能性があるという課題意識があります。
未成熟な技術ブロックチェーンが社会基盤として安全に効率的に運用されるかの試金石でもある。仮想通貨取引所11社が分散化したシステムを利用して日本を介して世界中の仮想通貨の取引がなされる、日本は間違いなく仮想通貨先進国となったのです。
*投稿日現在の情報を元に記した内容です。