量子コンピュータとブロックチェーン

弊社内での議論を質問形式で公開します。
 藤本 眞 :カウラアドバイザ
 岡本克司 :カウラCEO

量子コンピュータの利用例として、
一番期待される市場、商品・サービスは?

  現実に利用可能な量子コンピュータはD-WAVE社のような最適化問題専用計算機ですね。この範囲での応用は、極端に言えば以下の2点となります。

  • 暗号通信などのセキュリティ
  • AI・機械学習の高速化:特に処理が重いか、クラウド化にスピードが必要なもの

音声認識や画像認識のような学習済みを利用するタイプのものは、量子コンピュータでないと・・・とはなり難いです。つまり、毎回学習する必要のあるもの、例えばコロナに効く可能性のある薬の分子構造を探すツールとかです。
整理すると

a) 「沢山から答えを探すのがタイプ」が期待される応用  

  • MaaS 最適経路 交通制御 
  • 金融 ポートフォリオ最適化など
  • 創薬や材料の探索
  • 種々逆問題を解く:SCMや社会システム 複雑なロボット制御

b) 以外と必要ないものは、「探し方が分かったものを利用できる」もの

  • 画像や音声の認識
  • FAでのAI応用

  です。まとめますと、「利用例として、一番期待される市場、商品・サービス」の概要としては、上記のa)です。

量子コンピュータの技術課題は?

まだこれからですから、課題は全てとも言えます。強いて言えばハードで、次がソフト(アルゴリズム)です。
実際、一番先行しているD-WAVE社でさえ、実用には規模が小さすぎます。
今できることは、素数を求めるとか、量子探索をするとかのデモ程度です。実用化には、まず規模を確保して安定に動くハードを実現することと思います。

少し技術的な話ですが、量子コンピュータは、量子としての振舞いをする粒を並べてた量子状態を作りだして、この並びの量子の干渉させます。干渉が落ち着いたところが答えだって言うアナログ計算機です。
ですから、プログラムは、計算内容を量子の並びや干渉のさせ方に変換する操作となります。具体的にはベクトル空間の操作ですから、数学なので計算ごとのアルゴリズム開発と言ったものです。

この意味で、実用化にはアルゴリズム開発が課題になります。
NEDOが日立製作所でCMOSを使った量子コンピュータのハード・シュミレータを公開して利用促進しているのは、このアルゴリズムの開発促進ですし、世界中で競争しているのはこのためです。量子コンピュータは、実用化には応用の数だけアルゴリズムが必要なので、ハードが出来てなくっても一生懸命に開発してるのです。

少し戻りますが、D-WAVE社ですら量子ビットの冗長性を入れて装置の安定を図っていると聞きます。他はまだまだこれからと思います。

課題は、答えろと言われたらハード、でも、ソフトもと言った意味を分かって頂けました?ついでですが、汎用が期待される量子ゲートはまだまだ実用には遠いと思います。

もう一つ、暗号通信はシンプル(原理的)なアルゴリズムですし、効果は次元が違います。現在のシステムへの組込み方法など上記した点とは違った課題があると思います。

ブロックチェーンとの組み合わせは効果的か?

  ブロックチェーン技術を範囲をどの様に考えるかによると思いますが、あまり効果はないと思います。量子コンピュータの特徴は、極端に言えば「超大量にあるものを分類する」作業が超早くなるってことになります。 一方、ブロックチェーンはネットワーク中に分散・繋ぎ合わしたデータを辿る仕組みですから、一義的にはネットとDBの方が遅くって活躍の場所がないと思います。

ただ、パブリックチェーンでは、構成要素に公開暗号の利用と、管理権限を得る仕組みにPoWを使ってますね。

この部分は高速にできます。つまり、計算の電気代で環境破壊と言われてる、BitCoinのマイニングは省エネ・高速になります。でも、PoWで管理をつなぐ仕組みは意味なすのでしょうか??別の方法がいるかもしれませんね。

まあ実際にこの目的に使える量子コンピュータができるのは当分先の話なので、気にする必要はないと思いますが、、。

ブロックチェーンの仕組みに直接影響があるとは言えないですが、量子コンピュータは、例えば真の乱数は作れますし、超長いコードも処理できますので、台帳とは別にコンテンツや通信のセキュリティは影響すると思います。