EV(電気自動車)蓄電池の2次利用市場は、今後拡大する可能性が高いと考えられています。以下にその理由をいくつか挙げてみます。(カウラ株式会社 岡本克司|CEO)
1. EVの普及とバッテリーの寿命
EVの普及が進む中、使用されるバッテリーは通常8〜10年程度で性能が低下します。EVに搭載されるリチウムイオンバッテリーは、使用開始から数年後に容量が減少しますが、完全に使えなくなるわけではありません。そのため、まだ十分に性能を発揮できる状態のバッテリーを、2次利用するという考え方が生まれています。
2. 環境負荷の低減
2次利用はリサイクルの前段階として、廃棄物を減らし、バッテリー資源の有効活用に繋がります。特にリチウムイオンバッテリーは製造時に環境負荷が高いとされており、使用済みバッテリーの再利用は環境面でも大きな利点があります。
3. コスト削減
新しいバッテリーの製造コストが依然として高いため、EVバッテリーの2次利用は、特に価格敏感な市場で有効です。例えば、家庭用の蓄電池や商業施設向けのバックアップ電源として、リサイクルバッテリーを活用することで、コストを削減することができます。
4. エネルギー貯蔵システムの需要拡大
再生可能エネルギー(太陽光や風力など)の普及が進む中で、発電量の変動を安定化させるために大規模なエネルギー貯蔵システムが必要とされています。EVバッテリーを利用したエネルギー貯蔵システム(ESS: Energy Storage Systems)の市場は成長しており、これにより2次利用の需要が増加しています。特に、家庭用や商業施設の規模で、使い終わったEVバッテリーを再利用することが現実的な選択肢となりつつあります。
5. 規制と政策支援
政府や地方自治体は、持続可能なエネルギーの促進やリサイクルの強化に向けた政策を打ち出しており、2次利用市場の拡大を支援しています。例えば、EUや日本では、バッテリーのリサイクル率や再利用の義務が強化されているため、企業がこの分野に参入しやすくなっています。
6. 技術の進展
バッテリーの状態監視技術や再生技術が進化し、EVバッテリーの2次利用がより効率的で信頼性の高いものになっています。これにより、性能が低下したバッテリーでも、新たな用途に適用できる可能性が高まっています。
7.課題
しかし、2次利用にはいくつかの課題もあります。例えば、バッテリーの品質管理や残存寿命の予測が難しく、過剰な劣化や事故リスクを防ぐための技術的なハードルがあります。また、再利用するバッテリーの供給が十分でない場合や、必要なインフラが整備されていない地域では市場拡大が遅れる可能性もあります。
8.まとめ
総じて、EVバッテリーの2次利用市場は拡大が期待されており、特にエネルギー貯蔵、環境負荷低減、コスト削減という点でのメリットが大きいです。技術の進展や政策支援が進む中で、今後数年内にこの市場はさらに成長し、普及が加速すると予想されます。
9.弊社の取り組み
課題である「バッテリーの品質管理や残存寿命の予測」の対応は、国内、海外で蓄電池の専門企業と共同で開発をしております。研究の成果として電池品質管理モデルの開示を検討しております。また、再利用バッテリーの供給が十分でない場合の対応として、測定機会を増やす等データの精度・価値を上げる工夫と市場規模、進化が予想される中国、アジア、欧州、北米などパートナ企業と共に進出を検討しております。